プジョー203:戦後フランスを代表する革新的ファミリーカー
プジョー203:革新的ファミリーカーの歴史
1948年に登場したプジョー203は、戦後のフランス自動車産業の復興期において、プジョーの新たな顔となったモデルです。ルノー4CVやシトロエン15CVのような小型車が市場を席巻する中、プジョーは10CVクラスの信頼性と快適性を重視したモデルを開発しました。特に6人乗りのファミリーブレイクは、当時の家族向け車として革新的でした。

歴史と設計の背景
第二次世界大戦後、フランスの自動車産業は戦前モデルの生産に頼りつつ復興していました。プジョーは、大型セダンの企画を進める中で、予算制約の中でも安全性と快適性を高めることを目標としました。1948年のパリ自動車ショーで発表された203セダンは、商業的成功を収め、プジョー初のモノコックボディを採用しました。
モデルバリエーションと進化
203は単なるセダンにとどまらず、幅広いバリエーションを展開しました:
- ファミリーブレイク(6人乗り、3列シート)
- カブリオレ、クーペ
- 商用バン(トランスポート向け)
- スポーティモデル(203C、Darl’Mat仕様、2キャブレターやコンプレッサー搭載オプションあり)
これにより、プジョーは1つのモデルで多様なニーズに対応できるラインナップを実現しました。
注目ポイント:203Cでは完全同期式4速トランスミッションが採用され、後輪駆動による安定した走行が可能となりました。
技術仕様
- エンジン:1290cc 直列4気筒
- 最大出力:42~45馬力
- 駆動方式:後輪駆動
- サスペンション:前輪独立、後輪セミエリプティックリーフスプリング
- トランスミッション:初期は1速非同期式、203C以降は完全同期式4速
- 最大荷重(商用・ファミリーブレイク):600kg
デザインと内装
203はアメリカンカーの影響を受けた流線型デザインが特徴です。全長4.35m、全幅1.62mとコンパクトながら、実際より大きく見える印象を与えます。内装はシンプルですが、布製シート、オプションの革シート、暖房、収納スペース、コラムシフトなど、実用性と快適性を兼ね備えています。

生産と販売
プジョー203は1948年から1960年まで生産され、総生産台数は685,828台に達しました。ファミリーブレイクは1956年まで販売され、25,218台が市場に出回りました。その後、403へとバトンタッチされ、プジョーの歴史的モデルとして重要な位置を占めています。