シトロエンCXが登場してから10年後の1984年、次のフラッグシップモデルの開発が始まりました。コードネーム「Y30」として始まったこのプロジェクトは、より上質で革新的なクルマを目指してスタートします。
前輪駆動、横置きエンジン、ハイドロサスペンションはもちろん、可変ダンピング機能などのさらなる進化が求められました。フランス国内だけでなく、輸出(アメリカも含む)を前提としており、ブレーク(ワゴン)タイプや4WD仕様も構想に入っていました。室内空間はCXより広く、着座位置も高く設定され、プレミアム感が意識されていました。
1989年、XMデビュー!
55ヶ月の開発期間と75億フランの投資を経て、1989年5月、XMがついに登場。130馬力のガソリンエンジンと170馬力のV6エンジンを搭載し、翌1990年には115馬力のエンジンと110馬力のディーゼルも追加されました。
そのシャープなライン、リアクォーターウィンドウの切り返し、そして斬新なシルエットは、当時の他車とは一線を画していました。
好調なスタート、でも…
1990年、XMはカー・オブ・ザ・イヤーを受賞。初年度に約2万台を販売し、翌年にはフランス国内だけで4万台以上を記録。レンヌ工場では一日550台が生産され、1990年は年間93,000台以上が組み立てられました。
しかし1991年、電装系を中心としたトラブルが発生。100台以上の試作車が各3万km以上のテストを行っていたにもかかわらず、初期品質への不信感が広がります。実際にはすぐに改良されたものの、イメージ回復には苦戦。シトロエンがリコールを行わなかったことも影響し、1993年にようやく「XMコンフィアンス」キャンペーンを開始するも、販売の落ち込みは止まりませんでした。
1994年、再出発
XMは社内のライバル「ザンティア」とも競合していたため、1994年にはマイナーチェンジを実施。外観の変更は控えめにとどまりましたが、インテリアは一新され、質感も大きく向上。新しいエンジン、グレード、特別仕様車の追加もあり、販売は持ち直しました。
特にドイツ市場ではフランスよりも売れていたほどで、プジョー605よりも評価されていた点も興味深いところです。
進化と終焉
1997年には運転席・助手席エアバッグに加えてサイドエアバッグ、パワーウィンドウ、パワーステアリング、ABS、エアコンが「エクスクルーシブ」グレードでは標準装備に。ルノー・サフランより価格は高めでしたが、その分装備は充実していました。
1998年からは生産台数がさらに減少し、1999年には1日25台のペースに。2000年4月、12年間の生産を終えます。
当初は80万台の生産を想定していたものの、最終的な販売台数は333,405台。それでもプジョー605(22万台)よりは健闘しました。
生産台数の推移
- 1989年:46,282台
- 1990年:96,196台
- 1991年:49,119台
- 1992年:43,487台
- 1993年:20,977台
- 1994年:20,591台
- 1995年:17,800台
- 1996年:12,488台
- 1997年:9,584台
- 1998年:7,534台
- 1999年:6,992台
- 2000年:生産終了(1日25台ペース)
最後に
XMは、その革新性とフランスらしい個性で多くのファンを惹きつけたモデルでした。販売的には成功とは言えないかもしれませんが、今見ても魅力的な一台。シトロエンらしさが詰まった、知る人ぞ知る名車です。