2025年11月

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シトロエンBX:かつて「時代遅れ」と言われたクルマの、知られざる成功物語

 

一般の自動車ファンからは長らく「少し古臭いクルマ」と見られてきたシトロエンBX。しかしその歴史を紐解くと、実は驚くほど豊かで魅力的な背景を持っています。GSAの後継として誕生したBXは、その使命を完璧に果たし、シトロエン史上屈指のベストセラーモデルへと成長しました。

 

誕生の背景:再建を目指すシトロエン

 

1970年代末、シトロエンは非常に厳しい状況にありました。
1976年にプジョーグループに吸収され、SMは消滅、伝説のDSにも後継車はなく、小型車のVisaやLN(実質プジョー104の兄弟車)など、従来のシトロエンらしさから外れたモデルが続きます。

 

 

この混乱の中、GSAの後継車を開発することが急務となりました。
新型車には当然ハイドロニューマチックが搭載されますが、同時にPSA共通の部品を積極的に使うことも必須条件でした。

 

デザイン:ベルトーネによる大胆な方向転換

 

 

シトロエンとベルトーネのデザイン案が競合し、最終的にベルトーネ案が採用されます。
BXは角ばったシャープなスタイルを持ち、流線的だったCXやGS/GSAとは全く異なる新しい路線に挑戦しました。
それでも空力性能は良好で、CX値は0.335を達成しています。

 

インテリアも劇的に変化。
CXの“ルニュール式メーター”やサテライトスイッチは姿を消し、幾何学的でシンプルなデザインへ。ただし、シトロエンの象徴であるモノブランチステアリングは健在です。

 

 


1982年:衝撃のデビューと高い評価

 

1982年、BXが初公開されます。
大胆なデザイン変更に驚きつつも、メディアの評価は非常に好意的でした。

 

発売ラインナップ(当時の価格)

 

 

  • BX ベース:48,900F

  • BX 14 E:51,200F

  • BX 14 RE:53,000F

  • BX 16 RS:55,900F

  • BX 16 TRS:59,800F

 

 

下位グレードにはプジョー104のエンジンを搭載。
上位グレードには新開発のXU系エンジンが採用され、BXの将来につながる大きな進化となりました。


成長期:ディーゼル、受賞、そしてスポーツモデル

 

 

1983年、BX初のディーゼル(XUD 1.9L・65馬力)が登場し、高速性能と燃費の両立で高評価を獲得します。

翌1984年にはBX 16 TRSが日本のJIDPOデザイン賞を受賞。フランス車としては異例の快挙でした。

 

1985年:スポーティなラインナップ

 

  • BX Sport(126馬力):最高速度195 km/h

  • BX 4TC(グループBホモロゲーション):伝説的存在

 


 

BXブレーク:多用途ファミリーカーとして成功

 

GSAブレーク終了後、シトロエンのラインナップに空いていた「中型ブレーク」のポジションを埋めたのが、1987年登場のBXブレーク。
全長はセダンより17cm延長され、最大1.8㎥の荷室と535kgの積載能力を誇りました。ヘユリア製で、高い実用性が評価されます。

 

同年、BXは小改良を受け、内外装が一段と近代的になりました。

 


 

1988〜1990年:ディーゼルターボ、GTI、4×4へ展開

 

人気が落ち始めたタイミングで、シトロエンは新バリエーションを投入:

  • BX ターボディーゼル(90馬力):高耐久・低燃費で大ヒット

  • BX GTI 16S(160馬力・220km/h):シリーズ最強

  • BX 4×4:フルタイム4WD、LSD、ABS(オプション)

  • **BX 4×4 GTI(125馬力)**も1989年に追加

 


 

終焉と遺産

 

1993年、後継車のXantiaが登場し、BXは静かに役目を終え始めます。
特別仕様「コテージ」を最後に、生産は1993年(セダン)、1994年(ブレーク)で終了。

 

累計 2,315,739台 という大成功を収め、シトロエンの再建に大きく貢献したモデルとなりました。